基礎から学ぶ薄毛と抜け毛の対策

2022年9月
  • 妊娠・授乳期の薄毛治療薬使用についての注意点

    抜け毛

    妊娠中や授乳中は、母体だけでなく胎児や乳児の健康にも細心の注意を払う必要があるため、薬剤の使用には非常に慎重にならなければなりません。女性の薄毛治療薬についても、この時期の使用は原則として避けるべき、あるいは禁忌とされているものがほとんどです。まず、女性の薄毛治療薬として承認されているミノキシジル外用薬ですが、添付文書には「妊娠中又は妊娠していると思われる人、並びに授乳中の人は使用しないでください」と明記されています。妊娠中の使用に関する安全性は確立されておらず、胎児への影響が懸念されるためです。また、ミノキシジルが母乳中に移行する可能性も否定できないため、授乳中の使用も避けるべきとされています。次に、男性のAGA治療薬であるフィナステリドやデュタステリドは、女性への投与は原則禁忌であり、特に妊娠中の女性がこれらの薬剤に触れること(経皮吸収される可能性があるため)も厳禁です。男子胎児の生殖器の発育に異常をきたすリスクがあるためです。女性の薄毛治療にオフペイントで使用されることがあるスピロノラクトンも、妊娠中の安全性は確立されていません。動物実験では胎児への影響が報告されているため、妊娠中または妊娠の可能性がある場合は使用すべきではありません。また、母乳中に移行することも知られているため、授乳中の使用も避けるのが一般的です。このように、現在女性の薄毛治療に用いられる主な薬剤は、妊娠中や授乳中の使用が推奨されていません。もし、妊娠中や授乳中に薄毛が気になったとしても、自己判断で市販薬やサプリメントを使用するのは非常に危険です。必ず産婦人科医や皮膚科医に相談し、安全な対策についてアドバイスを受けるようにしてください。出産後のホルモンバランスの変化によって一時的に抜け毛が増える「分娩後脱毛症」は、多くの場合、特別な治療をしなくても自然に回復します。その間のケアとしては、バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレスを溜めないこと、そして頭皮に優しいシャンプーを使用するなどの方法があります。安全を最優先し、専門家のアドバイスに従うことが大切です。

  • AGAガイドラインとは?その重要性

    AGA

    AGA(男性型脱毛症)の治療を検討する際、あるいは医療従事者が治療方針を決定する際に、非常に重要な指針となるのが「AGAガイドライン」です。AGAガイドラインとは、日本皮膚科学会などの専門学会が、最新の医学的知見や臨床試験の結果に基づいて作成した、AGAの診断基準や治療法の推奨度を示した手引書のことです。このガイドラインは、数年ごとに改訂され、常に新しい情報が盛り込まれています。AGAガイドラインの最大の重要性は、科学的根拠に基づいた標準的な治療法を提示することで、患者さんがより安全で効果的な治療を受けられるように導く点にあります。世の中には、AGAに関する様々な情報や治療法が溢れていますが、中には医学的根拠の乏しいものや、効果が期待できないものも少なくありません。ガイドラインは、そのような情報に惑わされることなく、質の高い医療を選択するための羅針盤となるのです。ガイドラインでは、まずAGAの定義や診断基準が明確に示されています。これにより、医師は客観的な基準に基づいてAGAを診断することができます。そして、様々な治療法(内服薬、外用薬、植毛術、光治療など)について、その有効性や安全性に関するエビデンス(科学的根拠)を評価し、それぞれの治療法を推奨度(例:A:行うよう強く勧める、B:行うよう勧める、C1:行ってもよい、C2:行わない方がよい、D:行うべきではない)で分類しています。例えば、フィナステリド内服やデュタステリド内服、ミノキシジル外用は、高い推奨度で位置づけられている代表的な治療法です。これにより、医師はエビデンスに基づいた効果的な治療法を選択しやすくなり、患者さんも自分が受ける治療がどの程度の推奨度なのかを理解することができます。また、ガイドラインは、治療法の選択だけでなく、副作用への注意喚起や、治療効果の評価方法、患者さんへの説明のあり方などについても言及しており、AGA診療全体の質の向上に貢献しています。AGA治療を検討している方は、まずはガイドラインで推奨されている治療法について理解を深め、専門医と相談しながら、自分に合った治療法を選択していくことが、薄毛改善への確実な道となるでしょう。