ビオチン不足が引き起こす体のサイン

ビオチンは、私たちの健康維持に不可欠な栄養素ですが、体内で合成できないため、食事から摂取する必要があります。通常の食生活を送っていれば、ビオチンが極端に不足することは稀ですが、偏った食事や特定の状況下では不足することがあり、その場合には体に様々なサインが現れることがあります。ビオチン不足の代表的な初期症状の一つが、皮膚のトラブルです。ビオチンは皮膚の健康維持に深く関わっているため、不足すると皮膚炎や湿疹、肌荒れ、乾燥などが起こりやすくなります。特に、口の周りや目、鼻の周りなどに鱗屑(うろこ状の皮膚片)を伴う赤い発疹が現れることがあります。また、舌炎や口角炎といった粘膜の炎症も起こりやすくなります。髪の毛にも影響が現れます。ビオチンは髪の主成分であるケラチンの生成を助けるため、不足すると髪が細くなったり、パサついたり、ハリやコシが失われたりします。進行すると、抜け毛が増えたり、脱毛が起こったりすることもあります。白髪が増えるという報告もあります。爪にも変化が見られることがあります。爪がもろくなったり、割れやすくなったり、薄くなったりするのは、ビオチン不足のサインかもしれません。これらの皮膚や髪、爪の症状に加えて、全身的な症状として、疲労感や倦怠感、食欲不振、吐き気、筋肉痛などが現れることもあります。ビオチンはエネルギー代謝に関わっているため、不足するとエネルギー産生がスムーズに行われず、これらの症状が出やすくなるのです。また、神経系への影響として、抑うつ気分や無気力、知覚過敏、手足のしびれなどが起こることもあります。ビオチン不足は、極端な偏食、長期間の抗生物質の使用、遺伝的な代謝異常、あるいは生の卵白の過剰摂取(生の卵白に含まれるアビジンというタンパク質がビオチンの吸収を阻害するため)などによって引き起こされる可能性があります。もし、これらのサインに心当たりがある場合は、自己判断せずに医師に相談し、適切なアドバイスを受けることが大切です。バランスの取れた食事を心がけ、必要であればサプリメントなども活用しながら、ビオチン不足を防ぐようにしましょう。