脂漏性脱毛症とAGA(男性型脱毛症)は、どちらも薄毛を引き起こす代表的な疾患ですが、その原因や症状、治療法には違いがあります。これらの違いを正しく理解することは、適切な対策を講じる上で非常に重要です。まず、原因の違いです。脂漏性脱毛症の主な原因は、頭皮の皮脂の過剰分泌と、それを栄養源とする常在菌「マラセチア菌」の異常増殖による頭皮の炎症(脂漏性皮膚炎)です。一方、AGAの主な原因は、遺伝的要因と男性ホルモン(特にジヒドロテストステロン:DHT)の影響です。DHTが毛乳頭細胞に作用し、毛髪の成長期を短縮させることで薄毛が進行します。次に、症状の現れ方の違いです。脂漏性脱毛症では、頭皮のベタつき、脂っぽさ、黄色っぽい湿ったフケ、かゆみ、赤み、湿疹といった頭皮の炎症症状が顕著に現れるのが特徴です。脱毛のパターンとしては、頭部全体が均等に薄くなるびまん性の脱毛が多い傾向があります。一方、AGAでは、頭皮の炎症症状は必ずしも伴わず、主に額の生え際の後退(M字型など)や頭頂部の薄毛といった特定のパターンで進行することが多いです。ただし、脂漏性脱毛症とAGAが併発している場合は、両方の症状が見られることもあります。治療法にも違いがあります。脂漏性脱毛症の治療は、まず原因となっている脂漏性皮膚炎を改善することが中心となります。抗真菌薬(マラセチア菌を抑える薬)やステロイド外用薬(炎症を抑える薬)、ビタミン剤の内服などが用いられます。また、皮脂の分泌を抑えるための生活習慣の改善や、適切なシャンプー選びも重要です。一方、AGAの治療は、DHTの生成を抑制する内服薬(フィナステリドやデュタステリドなど)や、発毛を促進するミノキシジル外用薬などが中心となります。このように、脂漏性脱毛症とAGAは、原因も治療法も異なるため、自己判断で誤った対策を行うと、症状が悪化したり、効果が得られなかったりする可能性があります。薄毛の症状が見られたら、まずは皮膚科や専門クリニックを受診し、医師による正確な診断を受けることが何よりも大切です。