AGA(男性型脱毛症)治療薬の中でも、フィナステリドやデュタステリドといった内服薬は、肝臓で代謝されるため、稀に肝機能障害を引き起こすリスクがあることが報告されています。重篤な肝機能障害に至るケースは非常に稀ですが、治療を受ける際にはこのリスクについて理解しておくことが重要です。肝臓は、体内で薬物を分解・解毒する役割を担っています。AGA治療薬を服用すると、有効成分が肝臓で代謝され、その過程で肝臓に負担がかかる可能性があります。特に、元々肝臓に何らかの疾患がある方や、肝機能が低下している方は、薬剤の代謝がスムーズに行われず、肝臓への負担が大きくなりやすいため注意が必要です。肝機能障害の初期症状としては、倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、尿の色が濃くなる、右上腹部の痛みなどが挙げられます。しかし、初期の段階では自覚症状がないことも多いため、定期的な血液検査によって肝機能の状態をチェックすることが非常に重要となります。多くのAGAクリニックでは、内服薬の処方を開始する前と、治療開始後数ヶ月ごと(例えば3ヶ月~6ヶ月ごと)に血液検査を行い、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPといった肝機能マーカーの値を確認します。これにより、肝機能障害の兆候を早期に発見し、重症化を防ぐことができます。もし、血液検査で肝機能の異常が見つかった場合は、医師の判断により、薬剤の減量や一時的な休薬、あるいは治療薬の変更といった措置が取られます。多くの場合、これらの対処によって肝機能は回復するとされています。AGA治療薬による肝機能障害のリスクを最小限に抑えるためには、まず、治療開始前に医師に自分の健康状態や既往歴(特に肝臓病の経験)、現在服用中の他の薬剤などを正確に伝えることが大切です。また、アルコールの過剰摂取は肝臓に大きな負担をかけるため、AGA治療薬を服用している期間中は、飲酒量を控えるか、禁酒することが推奨されます。そして、医師の指示に従い、定期的な血液検査を必ず受けるようにしましょう。万が一、肝機能障害が疑われるような自覚症状が現れた場合は、次の診察を待たずに、速やかに医師に相談することが重要です。