これは私の実体験に基づいた話ですが、薄毛を隠すために帽子を常用していると、社会生活において非常に気まずい局面に遭遇することが多々あります。その最たるものが「室内での帽子マナー」です。欧米化が進んだとはいえ、日本ではまだ「室内では帽子を脱ぐべき」というマナーが根強く残っています。しかし、私たち薄毛族にとって、帽子は単なるファッション小物ではなく、体の一部、あるいは心の鎧なのです。それを脱げと言われるのは、人前で下着を脱げと言われるのに等しい羞恥心を伴います。例えば、友人の結婚式の二次会や、目上の方との会食。格式高いレストランであればあるほど、クロークで帽子を預けるよう促されるプレッシャーは計り知れません。 私はかつて、デートで入ったレストランで「帽子をお預かりしましょうか」と言われ、頑なに拒否して気まずい空気になったことがあります。彼女は私の薄毛を知っていましたが、店員さんの視線や周囲の客の目が気になり、食事の味が全くしませんでした。また、職場の飲み会で座敷席に通されたときも地獄でした。靴を脱ぐのと同時に帽子も脱ぐ流れになり、トイレに駆け込んで必死に髪を整えましたが、汗で張り付いた前髪はどうにもならず、結局その日はずっと俯いて過ごしました。こうした苦悩を乗り越えるために私が学んだのは、「事前のリサーチ」と「カミングアウト」の重要性です。食事をするなら個室を予約する、あるいは帽子着用のままでも違和感のないカジュアルな店を選ぶ。そして親しい間柄であれば、笑い話として「脱ぐと光るから勘弁して」と先に言ってしまう。意外と周りは気にしていないことも多く、自分が堂々としていれば、帽子を被ったままでもマナー違反だと目くじらを立てられることは少ないと気づきました。マナーとコンプレックスの狭間で揺れる心は痛いほど分かりますが、自分を守るためのルールを自分で作ることも、快適に生きる知恵なのかもしれません。
室内で帽子を脱げない薄毛男の苦悩