薄毛や抜け毛の悩みを抱え、いざ治療を考えたときに多くの人が疑問に思うのが「この治療に健康保険は使えるのだろうか」という点です。結論から言うと、薄毛治療が保険適用となるかどうかは、その原因が「病気」であるかどうかにかかっています。日本の公的医療保険制度は、生命の維持や日常生活に支障をきたす病気や怪我の治療を対象としています。そのため、薄毛の原因が皮膚疾患や内科的な疾患であると医師によって診断された場合には、その病気の治療の一環として保険が適用されるのです。一方で、AGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性男性型脱毛症)といった、いわゆる「体質的」な薄毛や、加齢による自然な変化と見なされるものは、生命に直接的な危険を及ぼす病気とは考えられていません。美容整形などと同様に、個人のQOL(生活の質)を向上させるための「美容目的」の範疇にあるとされ、原則として保険適用外の自由診療となります。この違いを理解することが、適切な治療への第一歩です。もしご自身の薄毛の原因に心当たりがない、あるいは急激な脱毛が見られる場合は、まずは皮膚科を受診し、病的な要因がないか診断してもらうことが重要です。そこで特定の病気が見つかれば保険適用の治療が始まりますし、AGAなどと診断されれば、そこから自由診療の専門クリニックを検討するという流れがスムーズでしょう。薄毛の悩みはすべてが自由診療というわけではありません。医師の診断によって特定の「病気」が原因であると確定した場合、その治療には健康保険が適用されます。では、具体的にどのような病気が保険適用の対象となるのでしょうか。最も代表的なものが「円形脱毛症」です。これは自己免疫疾患の一種と考えられており、毛根組織に対する免疫系の誤った攻撃によって、円形や楕円形に髪が突然抜け落ちる病気です。治療法としては、ステロイド外用薬の塗布や、症状によっては局所注射、紫外線療法などが行われ、これらは保険診療の範囲内です。次に「脂漏性皮膚炎」に伴う脱毛症が挙げられます。これは皮脂の過剰な分泌や、皮膚の常在菌であるマラセチア菌の増殖などが原因で頭皮に炎症が起こり、その結果として抜け毛が増える状態です。この場合、原因である皮膚炎を抑えるための抗真菌薬やステロイド外用薬による治療が保険適用となります。
薄毛治療は保険適用?知っておきたい基本ルール