「最近、特に秋になると抜け毛が増える気がする」。そんなふうに感じたことはありませんか。実は、季節の変わり目、特に春と秋に抜け毛が増えるのは、多くの人が経験する自然な現象であり、過度に心配する必要がないケースも多いのです。その背景には、いくつかの生物学的な理由と環境的な要因が考えられます。まず、動物の「換毛期」の名残であるという説があります。犬や猫などの動物が、季節の変わり目に毛が生え変わるように、人間にもその本能がわずかに残っており、季節に応じて髪の毛の生え変わりのサイクルが活発になるのではないか、という考え方です。次に、より科学的な理由として挙げられるのが、「夏のダメージの蓄積」です。夏の間、私たちの頭皮は、一年で最も強い紫外線を浴び続けています。紫外線は、頭皮の乾燥や炎症を引き起こし、毛根にある毛母細胞にダメージを与えます。また、夏バテによる食欲不振で栄養が偏ったり、暑さによる寝苦しさで睡眠不足になったりすることも少なくありません。これらのダメージが蓄積し、その影響が約2〜3ヶ月後、つまり秋口になって抜け毛の増加という形で現れるのです。春の抜け毛も同様に、冬の寒さによる血行不良や、乾燥による頭皮へのダメージが影響していると考えられます。また、春は新生活のスタートなど、環境の変化によるストレスが抜け毛の引き金になることもあります。では、この季節性の抜け毛にどう対処すれば良いのでしょうか。まずは、これが一時的な現象であることを理解し、焦らないことが大切です。その上で、夏のダメージを回復させるように、栄養バランスの取れた食事を心がけ、十分な睡眠をとることが基本となります。また、紫外線対策として、秋になっても日差しの強い日には帽子をかぶる、保湿効果のあるシャンプーで頭皮をケアするといったことも有効です。通常、季節性の抜け毛は1〜2ヶ月ほどで自然に収まります。もし、それ以上たっても抜け毛が減らない、あるいは細く短い毛が多く抜けるといった異常が見られる場合は、他の原因が考えられるため、専門医に相談することをお勧めします。