高血圧は、サイレントキラーとも呼ばれ、自覚症状がないまま進行し、心臓病や脳卒中といった深刻な疾患のリスクを高めることが知られています。しかし、その悪影響は、私たちの髪の毛にも及ぶ可能性があることをご存知でしょうか。高血圧が髪の毛に与える主な悪影響は、頭皮の血行不良です。高血圧の状態が続くと、血管に常に高い圧力がかかり、血管壁がダメージを受けやすくなります。これにより、血管が硬くなったり、内腔が狭くなったりする「動脈硬化」が進行します。動脈硬化は、太い血管だけでなく、頭皮に無数に存在する毛細血管にも起こり得ます。毛細血管は、毛根に栄養や酸素を送り届け、老廃物を運び去るという、髪の成長にとって非常に重要な役割を担っています。しかし、動脈硬化によって毛細血管の血流が悪くなると、毛根への栄養供給が滞り、毛母細胞の活動が低下してしまいます。その結果、髪の毛は十分に成長できず、細く弱々しくなったり、成長期が短縮されて抜け毛が増えたりするのです。これが、高血圧が薄毛を引き起こす、あるいは進行させる一因となります。また、高血圧は、体内の酸化ストレスを高める可能性も指摘されています。酸化ストレスとは、体内で過剰に発生した活性酸素が細胞を傷つける状態のことです。活性酸素は、血管内皮細胞を傷つけて動脈硬化を促進したり、毛母細胞のDNAにダメージを与えてその機能を低下させたりする可能性があります。これにより、髪の成長が妨げられ、薄毛に繋がることが考えられます。さらに、高血圧の状態は、自律神経のバランスを乱しやすいとも言われています。自律神経は、血管の収縮や拡張をコントロールしており、そのバランスが崩れると、頭皮の血行が不安定になったり、皮脂の分泌が過剰になったりして、頭皮環境が悪化する可能性があります。これもまた、髪の健康にとってはマイナス要因となります。このように、高血圧は、血行不良、酸化ストレスの増加、自律神経の乱れといった複数のメカニズムを通じて、髪の毛に悪影響を与え、薄毛のリスクを高める可能性があるのです。